細川紙

細川紙とは

細川紙は、埼玉県小川町・東秩父村で古くから継承されている伝統的な手漉(てす)き和紙です。その技術は昭和53年に国の重要無形文化財に指定され、平成26年にはユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に「和紙」(石州(せきしゅう)半紙(ばんし)・本(ほん)美(み)濃(の)紙(し)・細川紙)として記載されました。

 

この地域における和紙の歴史は、8世紀に遡るといわれています。江戸時代になると、大都市江戸の住人や商人が増え、紙の消費も増加しました。この地域は紙の一大消費地である江戸に近いため、江戸時代中期に紀州細川村(和歌山県)で漉かれていた細川奉書という良質な紙の技術がここに伝えられました。そして、細川紙の生産量は大幅に増加し、ここは紙の名産地として栄えました。

 

細川紙は、国内産の楮(こうぞ)を原料とし、伝統的な方法と用具で作られます。楮の内側にある長い繊維は強靭で、流漉きによって楮の繊維が絡み合い、丈夫な紙になります。耐久性が細川紙の大きな特徴の一つです。

 

 


工程

 

楮(かず)きり

1.楮(かず)きり

細川紙は国産の楮(クワ科の植物)を原料とします。楮のことを地元では「かず」と呼んでいます。収穫した楮は、2尺(約70㎝)くらいに切りそろえます。



 

楮(かず)かしき・楮(かず)む

2.楮(かず)かしき・楮(かず)むき

楮を大きな蒸し釜の中に根元を下にして立てます。楮を蒸して表皮をむき取りやすくし、蒸しあがるとすぐに表皮はむき取られます。



 

楮(かず)ひき

3.楮(かず)ひき

楮の黒い外皮を削り取って白皮にする作業です。黒皮や傷の部分をていねいに取り除きます。良質な紙を作るために欠かせない作業です。




 

楮(かず)煮

4.楮(かず)煮

楮を釜で煮ます。釜が煮立ったら、ソーダ灰を入れます。成分の炭酸ナトリウムには、白皮を軟らかくし不純物を取り除く効果があります。白皮の繊維は、一本一本ほぐれるようになります。


 

楮(かず)さらし

5.楮(かず)さらし

煮終えた白皮は、水につけて、あく抜きと日光漂白されます。篠竹で一本一本すくい上げ、ついているゴミや不純物をていねいに取り除いていきます。



 

楮打ち

6.楮打ち

紙漉きのための材料になるよう、白皮の繊維をさらにほぐすために楮打ち棒で入念に叩きます。




 

とろ叩き

7.とろ叩き

もう一つ紙漉きに欠かせない材料に、ねりがあります。トロロアオイという植物の根を叩いて抽出する粘り気のある液体です。ねりは、楮の繊維を水の中で程よく分散させ、浮遊させる働きをします。紙漉きの過程では、繊維をお互いにつなぎとめる作用があります。粘着力がないので、乾燥のときには紙を一枚一枚はがすことができます。

 

紙漉き

8.紙漉き

漉き舟とよばれる水槽に紙の原料となる漉き水(水、楮、ねり)をいれ、均等に分散させます。漉き桁に漉き水をすくい上げ、何度か流し込み、漉き簀の上に均等に繊維が行きわたるように繰り返し揺らします。漉きあがった和紙は、かんだとよばれる紙(し)床(と)台へ移され、一枚一枚積み重ねられます。


 

紙干し

9.紙干し

脱水した紙を一枚ずつはがし、紙板に貼りつけ、天日で乾燥します。紙板で自然乾燥した紙には、板の木目が残るなど独特な風合いがあります。今日では、鉄板で乾燥することが多くなっています。



 

紙そろえ

10.紙そろえ

乾燥し終わった紙は、室内で選別し整えられます。無傷で上質な紙は一の紙、少しでもむらがあれば二の紙へと選り分けます。一枚一枚ていねいに確認していきます。



 

 


用途

 

細川紙は、和本用紙、たとう紙(着物などを包む紙)、型紙原紙(着物の染色用)、古文書補修用紙などとして用いられるほか、壁紙や障子・照明などのインテリア、版画や水墨画用紙などの芸術・工芸用紙としての用途も広がっています。

細川紙をはじめ、小川町・東秩父村周辺で漉かれる和紙は「小川和紙」と総称され、大和ちり紙・画仙紙・染紙・名刺・賞状用紙・はがきや便せんなど、様々な用途の紙がつくられています。

 


後継者育成

 

細川紙技術者協会では、技術保存研修、他産地や用具・原料産地の調査、用具等の購入・補修、資料の収集・整理、展示会への出品や体験学習の指導など様々な活動を行っていますが、もっとも力を入れているのが後継者育成事業です。

 技術保持者が研修生に全工程にわたって技術指導を行っています。研修生は日々技の習得に励み、その成果を研修発表会や展示会などで発表しています。

 

 

 

細川紙技術者協会
〒355-0321埼玉県比企郡小川町大字小川230 埼玉県小川和紙工業協同組合

出典 「細川紙」細川紙技術者協会